こんにちは、かたりべのYUKAです。
本日お送りするお話はこちらです。
語り継ぐ思い出
▼タイトル
ある早朝の15分の話
▼ニックネーム
MK
▼思い出
朝の6時、クラブ帰り。
吐く息が白い。アルコールで火照った頬が、急激に冷えていくのを感じる。
マフラーに顔をうずめる。タバコのにおいが鼻をつく。耳の奥にまだ、重低音のリズムが響いている。
空を見る。
タバコの香りとは対照的な、澄み切った空気がそこにある。コートを着込んだ人々がポケットに手を突っ込み、足早に歩いている。
みんなどこかへ向かっている。
家路につく。
ぼんやりと見慣れた道を歩く。
遠くでカラスが鳴いている。
「もう、戻らないよ。」
穏やかな口調でそう伝えて、2年前に私は実家を出た。その時の母の顔を、私は覚えていない。
母は何も言わず、ぎゅうっとしがみついていた手の力を緩め、私を手放した。覚えているのはその、諦めたような脱力の仕方だけだ。
帰る。一人暮らしの家へ帰る。私の家は私しか住んでいないから、誰も私を待っていない。誰も待っていないから、急ぐ必要も、染み付いたタバコのにおいに引け目を感じる必要もない。
誰も私を待っていない。
その状態が持つ無責任な気楽さと如何様にもごまかしのきく寂しさが、私という存在を軽くする。
歩く。
好きなテンポで歩く。
空がだんだんと白み始める。
遠くでカラスが鳴いている。
耳奥の重低音は気がつくと消えていた。
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それでは、かたりべのYUKAでした。
次のお話でまた会いましょう。
かたりべ:YUKA(伊藤夕佳/いとうゆか)
舞台女優・声優・歌い手・舞台制作担当として活動中/ラジオFM HOT 839「テイクハートタイム」アシスタント/オンラインゲーム「キャラフレ」双星亜美CVTwitter 伊藤夕佳@henllietta
Blog「honey sweet diary」